飛行船、飽和

 

食わず嫌いしていた作家の本を読んで、案の定の気に食わなさと、思った以上に心打たれる文体に心が鎮まる。

鎮まるとは、ある意味、心躍ることでもある。

心が静まっているとき、私の頭は船と星のことでいっぱいになる。

いつか巨大な飛行船に乗って、知らない星に行く妄想が、いつも脳内を支配する。

それは希死念慮の強い人間たちのための救助船で、嫌なことがひとつもない星に連れて行ってくれる。

この妄想が始まったのは、あるカルト宗教の集団自殺に関するネット記事を読んだことがきっかけだ。

その記事はあまりにもセンセーショナルで残酷で悲しい事実が述べられているけど、私の中で何かひとつの答えが出たような、生き延びていく術が与えられたような、そんな記事だった。もちろん私は自殺なんてしないし、きっと誰よりも長生きすると思う。悲しいことに身体が強いから。

けど、生きていることにこんなに冷徹な視線を投げられる人間に、今まで現実に出会ったことがない。

こういうことはあまり言ってはいけないのだと知ってからは、目の輝きを捏造した。

 

 

 

好きな人やものを増やしていくことが生きていく術なんだろうか

 

使い捨ての愛、プラスチックみたいに海面に浮遊する愛、いつか誰かが網で掬い上げてくれるだろうか

私のあのときの愛は、今どこの海を漂っているだろうか

何もかもなかったことにしたとしても、「あった」ということは、揺るぎない事実だから

巨大な飛行船が迎えに来るまで、私は寿命をまっとうする

 

 

 

 

 

月でも城崎でも

 

 


(Poets often use many words

To say a simple thing

It takes thought and time and rhyme

To make a poem thing


With music and words I've been playing

For you I have written a song

To be sure that you'll know what I'm saying

I'll translate as I go along)

 


Fly me to the moon,

and let me play among the stars

Let me see what spring is like

on Jupiter and Mars

In other words, hold my hand

In other words... Darling, kiss me


Fill my heart with song,

and let me sing forever more

You are all I long for all I worship and adore

In other words, please be true

In other words... I love you


In other words, please be true!

In other words... I love you!

 

 

 

(詩人は沢山の言葉で

簡単な気持ちを表現するものだけれど

詩を「歌」にするには

時間と考慮と韻が必要


最近、音楽と言葉でいろいろ試しているんだ

君に歌を書いたよ

でも君はニブイから

念のため通訳しながら行くよ)

 


私を月まで連れてって

星空で遊ばせて

ジュピターとマーズの春がどんなものか、見せて

それじゃ分からないなら…

つまり、手をつないで!

だから、キスして!


私の胸を歌で満タンにして

永遠に歌わせて

私が憧れるのは、欲しいのは、信じるのは、全て君だけ

それでも分からないなら…

つまり、どうか裏切らないで!

だから、ホレてるんだってばさ!


つまり、お願いだから嘘吐きにならないで

簡単に言えば、愛してるってことさ

(言わせないでよね)

 

 

 

 

 

https://m.youtube.com/watch?feature=youtu.be&v=ZEcqHA7dbwM

 

https://m.youtube.com/watch?v=-0zcc8CNcLc#

 

 

日記

 


夢日記をつけると気が狂うと聞いたことがある、わたしは早く気が狂いたいので毎日日記をつける、目が覚めて妙に冴えてる頭を自分で殴って街にでかける、行き場がなくてそのまま反対方向のバスに乗って家に帰る、人混みも風も渋滞も音楽も、どうしようもないくらい現実。

 

いつまでもいつまでも眠っていたい。眠っているあいだはすべてから逃れられる、煩瑣な思考の洪水からも、セルライトからも、多分生や死や愛からも。明日の分も想像の日記をつける、語りようによってはすべてが真実だからうけるね、今日もどうしようもなく正常だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸橋で願いごと

 

 

でもどうしてこんなに天気のいい日に一人でいなきゃいけないんだろ

一人で川を眺めてる

 

久しぶりに乗った阪急電車、三宮行き

 

阪急と京阪乗ると悲しくなる

JRはならない

できるだけ賑やかな音楽を聴きながら今度の休みに水族館に行こうとか考えてた

 

 

 

なんでもないことが本当になんでもないまま私の中だけで終わってしまって私の中からもいつか消えてしまうことが悲しい

 

馬鹿だねって隣で笑ってくれる人がほしい

手を繋いで一緒に帰ってほしい

平凡な映画を観て途中で飽きて寝たい

 

 

 

でもどうしてこんな、君日和に

私は一人で川を眺めなきゃいけないんだろ

 

 

 

 

30分だけ

 

 

なにもかもわからなくなった スタート地点に戻ったらよけいわからなくなった こまった 心だけ振り出しに戻った 体は毎秒老いていくのに わからなくなって立ち戻ったら慎重な一歩がもう踏み出せなくなって 我に帰ると信号は4回変わってて 泣きたい 暴れたい 静かにうちに帰ることしかできない 冬

 

 

 

金木犀とセブンイレブン

 

好きだった人が隣で「金木犀の香りがする」って言った

 

セブンイレブンの前で煙草を吸った

好きだった人はしゃがんで私の足首に触った

半年前の傷痕まだ残ってた

 

あなたのせいで何もかも美しい思い出になってしまう、の秋